第三幕・第一場:15人目の証言者

下手よりに椅子。そこに腰掛ける警備員の堺。モニターに向かっている。
上手からムロタ、ミヤモト、ナガタ登場。

ムロタ 「ここが警備室ですか」
ナガタ 「すごいな、モニターがいっぱいだ」
サカイ 「いや、ご足労掛けてすみませんな!こちらも一応契約で、見回りの時間と特に理由がある場合を除いてこの部屋を離れてはいかんということになっておりましてな!」
ムロタ 「いえ、そういうことなら仕方がありません」
ナガタ 「でも、いなくなってもバレないんじゃ」
サカイ 「そうもいかないのでしてな、この部屋は一応本社の方でずっとモニターしておりまして。このお屋敷の防犯カメラの映像も全部このパソコンからネットワークを介して本社の方に送っておるのですわ。おかげで、この部屋を離れて廊下を意味もなくうろついておると、全部筒抜けと、こういうわけですな。いやはや」
ムロタ 「ということは、この家で起きたことは全部ご存知、というわけですか?」
サカイ 「いやいや、さすがに個人の部屋までカメラを仕掛けるわけにはいきませんからな。玄関とか、庭とか、門前とか、その辺りだけですわな」
ムロタ 「廊下は、いかがでしょう」
サカイ 「廊下はありませんな。要するに外部の人が入り込む可能性の高いところだけを見張っておるものでしてな」
ムロタ 「なるほど、それでは、権堂氏が亡くなられたその前後、権堂氏の部屋を出入りした人がいないかどうかを確認したいのですが、それは分からないということですね」
サカイ 「うむ、それはお役に立てませんな」
ムロタ 「なるほど」
サカイ 「それはお役には立てませんが、これだけは言えますな」
ムロタ 「何でしょう」
サカイ 「昨日から今日にかけて、外から怪しげな人物が入り込んだということは有り得ない、と」
ムロタ 「有り得ませんか」
サカイ 「有り得ませんな。旦那様が亡くなられたのは誰かが手を下したせいなのだとしたら、それは外部の人ではないと、それは断言できますな。何せ、昨日の夜から警報機が鳴ったのは一度だけ、坊ちゃんが引っ掛かられた時だけですからな」
ムロタ 「なるほど」
ミヤモト 「それにしてもサカイさん」
サカイ 「なんですかな」
ミヤモト 「いや、大変なお仕事のようですね。この部屋で一杯やっていたら、本社の方にちゃんと記録が残るわけですか」
サカイ 「そうですな、おちおちサボることもできませんな」
ミヤモト 「まかり間違ってこのパソコンがウィルスに感染でもしてしまえば本社だけじゃない、サカイさんのサボっている姿が全世界へと中継されてしまうわけですか」
サカイ 「そうなりますな!いやはや、弱った職場ですな」
ミヤモト 「くくくっ」
ナガタ 「ミ、ミヤモト?」
ミヤモト 「はーっはっはっはっは。いや、失礼。サカイさん、少しお手伝いしていただけませんか」
サカイ 「なんですかな」
ミヤモト 「いえ、簡単なことですよ。何かあった時の責任はボクがとります。ああそうだ、それからムロタさん」
ムロタ 「なんでしょうか」
ミヤモト 「権堂夫人とご子息、会長秘書と5人の家政婦、それからトノムラ副会長と副会長秘書をちょっとここに呼んでいただけませんか」
ムロタ 「ミヤモトさん、何を始められるおつもりですか」
ミヤモト 「これは本来ボクの領分ではないのですが、ムロタさんが請け合って仕舞われたのだから仕方がない。ナガタくん、キミは言ったね、ボクにみんなを集めてぱぱーっとやって欲しいと。それならお望み通りやろうじゃないか、サカイさんの手をお借りして」
3人 「いったい何を」
ミヤモト 「謎解きを」


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