第二幕・第十五場:14人目の証言者

上手より、権堂家子息、庄司登場。

ショウジ 「お疲れさん、ぼくの話が聞きたいんだって?」
ムロタ 「ええ、ご協力をお願いいたします、権堂庄司さん」
ショウジ 「うひひ、いいよ」
ムロタ 「さて、早速ですが、昨晩から今朝にかけて何をなさっていたか教えていただけますか」
ショウジ 「何を、か。うひひ。でもぼく特に何もしてないよ」
ムロタ 「いえ、結構です。よろしくお願いします」
ショウジ 「分かった、分かった。昨日の夜ね。と言ってもね、実はね、昨日の夕方からネットでちょっと面白いゲームやっててさ、夕ご飯をパパやママと一緒に食べた以外はずっと自分の部屋に篭ってたからさ」
ムロタ 「面白いゲーム?」
ショウジ 「知らないだろうなぁ、うひひ。簡単に言えば推理ゲームみたいなのなんだけどさ」
ムロタ 「写真を撮って、そこがどこか当てるってゲーム、ですか」
ショウジ 「なんだ知ってんの」
ムロタ 「はい、偶然ですが」
ショウジ 「ちぇっ、まぁいいや。で、それでターゲットがウチの塀のところになってたからさ、なんか見当違いのこと言ってるヤツとか、近くまで来てるヤツとかいろいろいて、楽しくてなんか目が離せなくてさ」
ムロタ 「なるほど、そうでしたか」
ショウジ 「時々家政婦にジュースとか持って来てもらったから、ぼくがずっと部屋に篭ってたことは証言してもらえると思うよ。うひひ」
ムロタ 「昨日の夜、庭に出られて警報機に引っ掛かったそうですね」
ショウジ 「ちぇっ、そんなことも知ってんのか。そうだよ」
ムロタ 「何故、庭に?」
ショウジ 「え、そ、そりゃ、ネットのゲームに興奮してて寝付けなかったからさ、ちょっと涼みにだよ」
ムロタ 「そうですか、ではその時に何か気がついたことはありませんでしたか」
ショウジ 「な、なにかって?」
ムロタ 「何かです。物音がしたとか、誰かがいたとか」
ショウジ 「さ、さぁ、気がつかなかったけどな」
ムロタ 「ふむ。では、1時過ぎにお屋敷に戻ってからはどうされましたか」
ショウジ 「まだネットを見てたよ。おかげで今朝は寝不足でさ。朝ご飯は一緒に食べたけど、その後は部屋に戻ってまた寝てたな。鍵掛けてたから掃除のフタバは困ったかも知れないけどね。そうだ、フタバに訊けばぼくが部屋を出てないってこと証言してくれるんじゃないかな。パパが死んじゃった時はさ」
ムロタ 「なるほど。ちなみに権堂氏の部屋には」
ショウジ 「あんだけ凄い悲鳴上げられたらいくらぼくでも気がつくよ。それでびっくりして様子を見に行ったけど、部屋には入れてもらえなかったな。家政婦たちが『坊ちゃまには見せられません』って言ってさ」
ムロタ 「そうですか。では今日のことではなく、最近のことで、何か変わったことや気がついたことなどありませんか」
ショウジ 「変わったことねぇ、特に思い当たることないなぁ」
ムロタ 「どんな些細なことでもいいんです」
ショウジ 「些細なことねぇ、うーん、何日か前に家政婦見習いのイツミが大きなお皿を割ったとかでパパに酷く怒られてたぐらいかなぁ。それ以外にはあんまり」
ムロタ 「分かりました。どうもありがとうございます」
ショウジ 「あ、いいの?」
ムロタ 「はい、ご協力感謝いたします」
ショウジ 「そ、じゃあ」

ショウジ、上手に退場。

ムロタ 「さて、これで全員分の証言を聞いたでしょうか」
ナガタ 「いや、ただ聞いてるだけでも疲れたな、これ」
ミヤモト 「一人」
ムロタ 「え?」
ナガタ 「なんだよミヤモト」
ミヤモト 「一人、まだ証言を聞いていない人がいる」
ムロタ 「誰です?」
ミヤモト 「ヒトエさんが言っていただろう。この家には住み込みの警備員がいると」
ムロタ 「ああ確かに、そうでした。(上手に向かって)きみ、警備員さんを呼んでいただけませんか」

三人、しばらく無言で待つ。

ムロタ (上手に)「どうしました。え?来れない?どうしてです。ああ、持ち場を離れられないと」
ナガタ 「融通が利かない人だなぁ」
ミヤモト 「いいじゃないか、どうせあと一人なんだ、こっちから出向こう。何せ、さっきから舞台が動かなくて退屈してたんだ」
ナガタ 「退屈って、余裕だなぁ、この名探偵は」
ムロタ 「仕方ありません。ミヤモトさんの言う通りにしましょう」

三人揃って上手に退場。


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