第二幕・第一場:ムロタ警視

下手側に警視。名前は室田由希子。

ムロタ (上手に向かって)「なんですか騒がしい!うん?ああ、いや、その人は良いんです、通して下さい。何を五月蠅いことを、黙っていれば分からないことでしょう!責任は私がとります!」

上手からナガタとミヤモトが登場。

ムロタ 「いや、お久し振りですミヤモトさん」
ミヤモト 「ええ、お久し振りです、ムロタさん。警視に昇進なさったとか。おめでとうございます」
ムロタ 「給料に比べて責任ばかりが増える一方の昇進ですよ。と言ったら同期に叱られますかね。いや、これはどうかご内密に。ところで、今日はどういったご用件で?と訊くのも野暮でしょうね。分かっています、権堂氏の件ですね」
ミヤモト 「話が早くて助かります。通していただけた、ということは捜査に混ぜていただける、と解釈して構いませんか?」
ムロタ 「もちろんです。それにしてもやけに耳が早いですね、どうしてこんなタイミングで?」
ミヤモト 「ええ、この、記者のナガタくんが別件でこの権堂家に取材に来たところ、この件にぶつかったらしくて。ナガタくんとは旧知の仲ですから、頼まれてはイヤとは言えませんので」
ナガタ 「嘘つけ」
ミヤモト (無視して)「それで、今はどういった状況なのでしょう」
ムロタ 「死因はまだはっきりとはしていませんが、何かのガスによる中毒死の線が濃厚です。ただ、誰が何の目的でどうやって、というのが皆目分からない状況です。自殺の線は考えにくいのですが、かと言って、事故とも、他殺とも。弱ったものですよ」
ミヤモト 「なるほど。では科学的捜査の方は警察にお任せするとして、ご家族の方などからお話を聞くことはできますでしょうか」
ムロタ 「実を申しますと、こちらの方もこれから事情聴取を始めるところでしてね、そこに同席していただくのが良いでしょう。ただし、言うまでもなくお分かりのこととは思っておりますが、くれぐれも情報の公開については……」
ミヤモト 「ええ、分かっています。ご協力に感謝します」
ムロタ 「いえいえ、こちらこそ。これまでのことを考えれば、ミヤモトさんには感謝してもしきれませんよ」
ミヤモト 「それでは、早速お話を伺いたいのですが」
ムロタ 「ええ、ではこちらにお呼びしましょう。きみ!」

ムロタ、上手に声をかける。

ムロタ 「まずはちょっと、第一発見者を呼んできてくれないか!」


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